親御さま相談室

<受験生(6年生)の8月末(夏休みの終わり)までの学習方法>

夏休みが終わり、秋になると志望校の過去問をどんどんと解いていかなければなりません。
できれば入試本番までに、第一志望校の過去問であれば、少なくとも5回ずつ10年分は解くべきです。
たったの1校しか受験しないというお子さまは少数派だと思いますので、例えば、第三志望校までの過去問をそれぞれ全部解くと仮定すると、かなりの時間がかかります。しかも、解いてしまってオシマイではありません。

「どのような問題を間違えたのか」「どんなミスの仕方をしたのか(問題文に対する理解の不足、語彙力の不足、設問の読み間違い など)」をまずは見極め、「どのように対策を練ったらいいのか」ということを分析しながら、完璧に対応できるように対策を立てて学習をしていく必要がありますので、「過去問を解く」と一言でいっても非常に長い時間を要します。

ですから、夏休みが終わるまでにまず学習しておかなければならないことは、 I .「必ず基本的なことをすべて理解しておくこと」と II .「弱点を見つけたらすぐに補習をしておくこと」です。ここでは、IとIIのそれぞれについて詳しくご説明したいと思います。

I .<基本的なことをすべて理解しておく>

まずは、国語という教科の「学習の基本」とは何かを読解問題にフォーカスして述べます。

それは、(1)「語彙力」(2)「文章を正しく読む」(3)「書く力」の3つです。
この3つの力があれば、ほぼ正解を導くことができます。
そして、この3つの力はどれが欠けていても読解問題に取り組む際に支障がでます。

漢字が読めず、しかもその言葉の意味がわからなければ、その問題文を正しく読み取ることは難しくなります。そして、問題文が理解できていなければ設問への対応が難しくなります。また、書く力がなければ配点の高い記述問題への対応ができません。そこで、この3点を克服していくために、6年生の8月末までに必ず学習しておいて欲しいことを以下に述べていきます。

「語彙力」をつける

まず、学校の教科書や塾のテキストに載っている漢字や言葉の意味をできるだけ完璧に覚えるということです。少なくとも今まで習ったものは、きちんと読み書きができて、意味を理解できていなければなりません。
「すでに習ったものは完全に覚えている」という自信のあるお子さまは、できるだけ多くの語彙力をつけるために、夏以降に習う予定のものも少しずつ無理のない程度に覚えてしまうといいと思います。「新しい漢字や言葉をどんどん覚えていく」というこの先取り学習に限っては、絶対に弊害はありません。むしろ、入試における読解問題を解く際には、漢字や言葉を多く知っていれば知っているほど有利になります。
このことにつきましては、一度中学の入試問題を解いて頂ければおわかりになると思います。中学入試の読解問題には、文章中に小学生の教科書では習っていないような言葉がたくさん出現します。学校の教科書や塾のテキスト以外の、例えば、お子さまが興味を持っている分野の著書や新聞を読んでいる時、もしわからない言葉に出会ったら、その言葉と意味を小さいノートに書き留めておくことも非常にプラスになります。

「文章を正しく読み取る」力を養う

中学入試の読解問題では、「説明文」「論説文」「物語文」「随筆文」が中心に出題されますので、これらの文章の構造を理解し、要点を捉えられるようにしておく必要があります。
この4つのジャンルの文章が正しく読み取れればまずOKです。
かつて、ある女子校でシナリオ形式の問題文が出題されたことがありましたが、それもたった一回きりでそれ以降、ここ10年は出題されておりません。
私があらゆる中学入試の読解問題を分析した結果、この例外を除いてはすべて「説明文」「論説文」「物語文」「随筆文」のどれかに該当します。
ですから、この4つのジャンルの文章を正しく読み取ることができればまず間違いなく中学入試の問題文はすべて読み取ることができるのです。
それに加えて、「設問文」も正しく読み取る力が必要です。
設問文を正しく読めるということは、「何をどのように答えればよいのか」ということをきちんと理解できるということです。一口に「設問文」を読むといっても正しく読むことは、小学生にとっては非常に難しいことなのです。
実力がありながら、設問文をそそっかしく読み間違えて、あるいは、設問の理解が十分でなかったために正解が得られないという受験生は多いのです。 これを「オッチョコチョイ」の一言で済ませないようにして下さい。
受験に関していえば、「オッチョコチョイ」も「ケアレスミス」も実力のうちとして判断されてしまいます。 では、どうしたらいいのかといいますと、これは訓練しかありません。
『中学入試 国語の読解は答え探しの技で勝つ!』でご紹介している「設問文の読み方テクニック」のページに記してある方法を何回も繰り返し練習するようにして下さい。
最初は概して小学生のお子さまというものは同じミスを繰り返しますが、毎日続けているうちに必ずミスがなくなってきます。
そして、設問に対応する際に「何をどのように答えるべきなのか」ということが正確に把握できるようになります。

「書く力」を養う

また、中学入試の読解問題は、とりわけ記述問題の配点が非常に高くなっています。ですから「書く力」がないと高得点に結びつくチャンスをみすみす逃してしまうことになります。そこで、書く力をできるだけ養っておく必要があります。
「書く力」も「語彙力」や「文章の読み取りの力」と同様、今学習したからといってすぐに効果が現れるものではありません。

『中学入試 国語の読解は答え探しの技で勝つ!』の著書の中でもご紹介しておりますが、読解問題の解法として、問題文の中から「答えや答えのヒントを探して解答するという記述式問題の解き方」はあります。
 もちろん、その解法は、記述式問題への対応としては非常に有効ですし、解法自体は「答えや答えのヒントを探して解答する」方法を使うべきなのですが、例えば、特に上位校などの場合、その記述問題は、解答する時にきちんと正しい日本語で文章に書き表わす力を試すような問題傾向になっています。
 しかも、記述問題はどの中学校の入試問題でも必ず配点が非常に高くなっており、学校によっては、採点の仕方が減点方式になっているのです。
このような採点方法の場合、記述した内容が合っていたとしても、誤字、脱字、文法的なミスがあれば、大きな減点対象になります。
そこでは、記述した内容が合っていること、そして尚且つそれを正しい日本語で文章にまとめるという力がかなり要求されます。
そこで、記述の力を養うために対策を立てておく必要があります。
一番好ましいのは、お子さまが、「ノートに書き留める」習慣をつけることだと思います。
内容は、どんなことでもいいのです。その日の学校での出来事、お友達とのやり取り、塾で学習したこと、お天気のことやニュースのこと、ジャンルを問わず書き綴ってみて下さい。
また、お子さまが自分の頭の中で想像力を働かせて創作し、「物語」を作って書いていくのもいいでしょう。
きちんと丁寧に書く必要はありませんし、字は、走り書きであまりきれいでなくても構いませんが、漢字の間違いや文法的なミスだけは親御さまがチェックして差し上げて下さい。(絶対に消しゴムで間違いを消さず、赤ペンでミスした部分のとなりに書き込むようにして下さい)
文法的なミスについてここで必ず親御さまにチェックして欲しいことは、「は、に、を、が、へ」などの使い方と「主語と述語」が正しく使われているかどうかです。
あまり厳しいチェックが入るとお子さまも書くこと自体がイヤになってしまい、「書くこと」に対しての意欲を損ないますので、チェックするのはこの2点で充分だと思います。
お子さまは、自分の興味のないことや自分にとって面白味のないことを半ば強制的に書かされることは極端に嫌う傾向にあります。しかし、自分の身の回りの楽しい出来事を書いたり、自分が自由に空想した物語を創作したりするのであれば、「書く」ということを楽しめるのではないでしょうか。
親御さまには、先ほど述べました2点の文法的なミスだけはチェックを入れて欲しいのですが、あとはどんな表現にしようとお子さまの自由にして差し上げて下さい。とにかく、続けるためには、無理なく気楽に書くことです。あくまで、楽しむことを目的として下さい。これをずっと継続していくと、秋を迎える頃には、着々と「文章を書く力」が伸びていることに気付かされます。

II .<弱点を必ず補習しておく>

6年生ともなれば、シビアなことを言えば、自分の弱点をしっかりと補習できる時間が思うように取れるのは夏休みの終わり頃までです。
他教科についてもいえることですが、弱点をそのままにしておくと、そこは穴が空いたままになります。
基本的な部分で穴が空いている状態では、秋以降の過去問の取り組みに支障がでます。
夏休みが終わってからは、塾などでは、基本的な学習というよりもすでに応用問題に対応できるような力を養うことを目的とした授業を行うようになります。すると、わからない問題はどんどんわからなくなってしまいます。
わからないとその問題に取り組むこと自体が苦痛になってしまいます。
そこで、夏休みの終わりまでにこの悪循環を引き起こさないよう補習をしておく必要があるのです。
まずは、弱点は何なのかを見極めましょう。

        ↓
  • 「漢字」「二字・四字熟語」「ことわざ」「慣用句」「文法」の知識が十分でない場合は、このホームページの「知識問題に対応するために」を読んで対策を講じて下さい。
  • 文章の正しい読み取りが苦手な場合は、『中学入試 国語の読解は答え探しの技で勝つ!』を参照の上、「説明文」「論説文」「物語文」「随筆文」の4つのジャンルの文章の読み取りのテクニックを養って下さい。
  • 設問文の読み間違いが多く「何をどのように答えるべきなのか」が理解できていない場合は『中学入試 国語の読解は答え探しの技で勝つ!』の「設問文の読み方テクニック」を参照して、設問文を正しく読み取れるように練習して下さい。
  • 書くことが苦手なお子さまは、先ほども述べましたように、メモ書き程度の日記をつけることをお勧めします。長い文章をきっちりと書く必要はありません。自分の身の回りの出来事やその時感じたこと、考えたこと、あるいは想像力を働かせた楽しい物語など、それらを書き留めておくと面白いように書くことが好きになり、また「書く力」も養われます。また、お子さまが書いた文章を「漢字のミス」「文法的なミス」だけ親御さまがチェックして(必ず赤ペンでお願いします)差し上げて下さい。

夏休みの終わりまでに、以上の点をしっかり学習しておけば、必ず秋以降の国語の学力は飛躍的に伸びます。

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